PC1  目を覚ますと、あなたは薄暗い屋敷にいた。  他にも人間がいる。彼らは味方だろうか……。  あなたの【使命】は日常へ戻ることだ。 秘密 ショック:なし  あなたは友人である黒川と怪異についての調査を行っていた。  多くの噂、都市伝説を集めてきたが未だ「本物」には出会えていない。  そんな中何も言わずに友人が消えたという事実は、あるいは福音かもしれない。  あなたの【本当の使命】は「本物の怪異」に出会い、できるだけ多くの情報を持って生還することだ。  あなたはプライズ「黒川の手帳」を持っている。  友人の残した手帳に記されていた、儀式めいたものを試したところまでは記憶にあるのだが……。 PC2  目を覚ますと、あなたは見知らぬ屋敷にいた。  寒さだろうか、体が震える。  あなたの【使命】は温かい日常へ戻ることだ。 秘密 ショック:全員  あなたには自分が死んでいるという自覚がある。  ここは死後の世界だろうか。少なくとも、あなたの知っている「現実」ではない。  不気味な世界で疎外感を覚える。死んでいるのは自分だけなのではないだろうか、そんな考えが脳裏をよぎる。  あなたの【本当の使命】は誰かと互いにプラスの感情を結ぶことだ。  この秘密を見た者は《霊魂》で恐怖判定。  死の間際、鏡に向かって譫言のように呟く人間を見た。彼は何者だったのだろうか。 PC3  目を覚ますと、あなたは見知らぬ屋敷にいた。  いや……確かに見覚えはないが、何かを知っている気がする。  あなたの【使命】は素晴らしい日常へ戻ることだ。 秘密 ショック:全員  あなたは「奈琴」と名乗る彼のことを知っている。彼は怪異だ。そう、以前あなたの姿であなたの前に姿を現した……。  鏡に映り、あなたと会話をしたがるだけの、優しい怪異だ。  あなたは、かつて孤独に苦しんでいたときに差し出された彼の手を取らなかったことを後悔し続けている。  あれ以来彼には会っていない。会えなかった。会いたかった。  彼こそはあなたの救い主。この好機を逃してはならない、絶対に。  あなたの【本当の使命】はこの怪異との未来を手に入れることだ。  この秘密を見た者は《憂い》で恐怖判定。 PC4  目を覚ますと、あなたは見知らぬ屋敷にいた。  不気味だ。こんなところにはいられない、一刻も早く帰りたい。  あなたの【使命】は愛しい日常へ戻ることだ。 秘密 ショック:全員  あなたの恋い焦がれる人、PC2が死んでしまった。  犯人は目の前にいた。あなたの恋人の命を奪った殺人犯は不気味に笑いながら涙を流している。  悲しみと苛立ちから掴みかかろうとするも何かに邪魔をされる。あなたの手はガラスに触れるだけだった。  あなたと鏡映しに同じことをしている相手の後ろには、恋人と同じ見た目のものがあった。あなたには、それが動くところが見えた。  「向こう」に行きたい。  恐らくその願いが通じて、あなたの恋人は今何事もなかったように生きているのだ。  あなたの【本当の使命】は恋人を連れて脱出することだ。  自分たちがいるべき場所は、ここではない。帰ろう、愛しい日常へ。  この秘密を見た者は《恋》で恐怖判定。  PC2は更に《痛み》で恐怖判定。PC4に対しプラスの感情を持っていた場合マイナスの感情に反転する。 黒川の手帳  PC1の友人の手帳。  怪異についての情報がまとめられている。  宍色の革の表紙はすべすべとして手触りがいい。  このプライズの秘密は持ち主が自由に見てよい。 秘密 ショック:なし  ・鏡の怪異  1.信憑性が高いとされる情報  鏡に向かって「お前は誰だ」と呼びかけると「それ」は現れる。  ただし、現状に満足している人間の前には現れない。  2.確認できない情報  「それ」に連れて行かれたら、戻ってこられない。  あるいは、戻ってくる必要がない。  3.怪異の外見について  話を聞いた中では誰もが「それ」とだけ言い、詳細を口にしないため、外見については不明。 奈琴  少女。左目の下に泣き黒子がある。  「わたしは奈琴」  「あなたも、わたしのともだちになってくれるの?」 秘密 ショック:なし  「ここは奈琴のお城なの」  「一緒に遊ぼう?」  「みんなで遊ぼう?」  にこにこにこにこ。  少女は微笑む。  ともだち。みんな少女のともだち。  陰鬱な屋敷の中で、少女の表情だけが明るく見える。  にこにこにこにこにこにこにこにこ。 奈琴のおもてなし  菓子や茶などの、好意の印。 秘密 ショック:口にした者  知識が脳裏に閃く。  黄泉戸喫。  「異世界」の食物は大抵の場合、登場人物をその空間に定着させ、捕らえるものだ。  これを食べてはいけない。  《味》で恐怖判定。  「おいしいよ? 食べないの?」  既に口にした者は更に《追跡》で恐怖判定。  何かが心臓を掴んでいるような気分になるのは、気のせいだろうか? 洋館  薄暗く、人気のない洋館。  洋館なので歩き回るのに靴を脱ぐ必要はない。  誰が掃除をしているのか、ほどほどに綺麗。 秘密 拡散情報 ショック:なし  「探検するの?」  奈琴が見取り図を差し出してくる。  あなたが出てきた部屋、消えた扉は描かれていない。  がらりとしているばかりで、気になるものは多くなかったが……。  「姿見」「黒川」公開。 姿見  姿見のようだが、そこに映っている光景に違和感を覚える。  「そのガラスね、奈琴とお話ができるの」  「今はもうそこにはいないんだけど」 秘密 ショック:全員  鏡にはあなたの姿が映っていた。  その鏡像の背後から無数の腕が迫るのが見える。しかし確認しても何もあなたには触れていない。  僅かに外した視線を戻すと、鏡の向こうに「あなた」はいなかった。  《暗黒》で恐怖判定。  この秘密を最初に見た者はプライズ「姿見のノート」を手に入れる。 姿見のノート  古ぼけた大学ノート。  表紙には「姿見鏡子」と名前が書かれている。  このプライズの秘密は持ち主が自由に見てよい。 秘密 ショック:なし  「このままここにいたら死ぬ!」  手順1 鏡の前で自分の姿を思い浮かべながら名前を言う  手順2 自分の姿が映るので、鏡に飛び込む  「何が違うの間に合わない間に合わないまにあわない早くにげないといけないのにきえる私が早く来て」  「ともだちなんてウソ、私をころすためにつれてきたんだ!」  《時間》で恐怖判定。 黒川  PC1の友人。  読書に夢中のようだ。  「ここは素晴らしい。私の望む知識がいくらでも手に入る」 秘密 拡散情報 ショック:シーンに登場している者  「おや、時間らしい。君たちも気をつけたまえ」  よく見ると、彼の下半身は黒い靄に覆われていた。  あなたが見ている前で靄は広がり、遂には彼を完全に飲み込んでしまう。  《死》で恐怖判定。  「竪琴の本」「少女の本」公開。  床に落ちた本だけが、そこに人がいたことを示している。 黒川の手帳・追記  ふと手帳を見ると、血のように赤い字で情報が書き足されている。  このプライズの秘密は持ち主が自由に見てよい。 秘密 ショック:なし  3.怪異の外見について  鏡写し。左は右に、右は左に。  4.怪異の領域  ここでは「それ」は鏡像ではなく、複写として存在している。  望むままに色々と出してくれるが、飲食物だけは出来がひどい。   竪琴の本  タイトルからすると何かの神話らしい。  竪琴の絵が描かれている。 秘密 ショック:なし  ギリシャ神話のオルペウスと妻の話が載っている。  「オルペウスは竪琴の名手でした。エウリュディケという、美しい妻がいました」  「ある日妻が死にました」  「愛する妻を失ったオルペウスは、たいそう悲しみました」  「オルペウスは冥府へと、エウリュディケを取り戻しにいきました」  「地上に着くまではうしろをふりかえらないという約束で、エウリュディケを連れてかえることをゆるされました」  「足音が聞こえなくなったので、不安になったオルペウスはついうしろを向いてしまいました」  「エウリュディケはあっという間に冥府へ戻ってしまいました」  「悲しみにくれるオルペウスは他の女には目もくれません」  「オルペウスは八つ裂きにされて、死にました」  「ふたりは冥府で幸せに暮らしました」 少女の本  タイトルからすると鏡に関係しているらしい。  塀の上に座る卵を見上げる少女の絵が描かれている。 秘密 ショック:なし  何気なく開いた本だったが、どこか違和感がある。  内容か?  いや、違う。そういった類のものではない。奇妙な物語であるという程度で驚くような状況ではないのだから。  言葉を話すチェスの駒。「未来」の痛みを嘆く女王。同時に進行する「火曜日」。  目を凝らす……何がおかしいのだろう?  鏡文字を読んでいたのだ。そうと意識することなく、当たり前のように。  《驚き》で恐怖判定。 奈琴?  少女。左目の下に泣き黒子がある。  「わたしは奈琴」  「あなたは、わたしのともだちをころすの?」 秘密 ショック:なし  「ここはわたしと、奈琴のためのお城なんだから」  よく見ると体中痣や傷だらけだ。  髪も毛先が揃っておらず、雑に切られていることがわかる。  奇妙にも、服は新しいもののようだ。  《痛み》で恐怖判定。 奈琴の手鏡  おもちゃの小さな鏡。  姿見のある部屋へ向かって光の線が伸びている。  このプライズに秘密はない。 誰かのメモ  小さな羊皮紙。  どことなく禍々しい。  このプライズの秘密は持ち主が自由に見てよい。 秘密 ショック:全員  「情報を一つ省いて教えるのは愉快だ」  「目の前にある出口へ辿りつけない哀れな子」  「『目』に見られている限りこの腹からは出られないというのに」  「ああ、悲鳴が聞こえる。実に愉快」  あなたは理解した。  少女が見ている。あの目がある限りあなたは外に出られない。  少女が見ている。見ている見ている見ている見ている見てあの目を少女でバケモノにすぐ潰さねば消さないと。敵だ。  《宇宙》で恐怖判定。  深呼吸をする。大丈夫、自分は冷静だ。  情報は全て揃った。アレを殺せば全て解決する。あの、奈琴と名乗る化け物を。 泡瀬の手記  かわいらしい日記帳。  表紙には「加賀見泡瀬」と名前が書かれている。  ところどころ読めなくなっているが、断片的な情報は得られそうだ。  「あの子を助けて」  このプライズの秘密は持ち主が自由に見てよい。 秘密 ショック:なし  「私にはできなかった」  「死体。私は死んだのだ」  「私は鏡を通って、鏡の中の世界へ来たというのか?」  「何も覚えていないらしい。私の他にも『殺した』はずなのに」  最初にこの秘密を見た者は1D6を3回振り、その出目に対応する「切れ端」及び「切れ端7」を手に入れる。重複した出目は振り直す。  二番目に見た者は残りの「切れ端」を手に入れる。 切れ端(1~7連番、表面統一)  手記の切れ端。  このプライズの秘密は持ち主が自由に見てよい。 切れ端1の秘密 ショック:なし  私が消えたら、カガミは孤独になる。  そうしたらまた、孤独な人間を連れてくるのだろう。  カガミは繰り返す。孤独を癒し、孤独になり、また孤独を癒すために人の命を奪う。  誰か、カガミを助けて。 切れ端2の秘密 ショック:なし  私は孤独だった。  少なくとも、そう感じていた。  だから「それ」を呼び寄せたのだと思う。  鏡を隔てている限り、それは友人だった。今でもそう思っている。 切れ端3の秘密 ショック:なし  はじめ、「それ」は私の言うことを繰り返すだけの存在だった。  私は仏頂面だったと思うのだが、それは微笑んでいた。  その微笑みのせいだろう。何度かやりとりをするうち、不思議と楽しくなってきた。  鏡の向こうに現れたそれを、私は「カガミ」と名づけた。  安直な名づけだったが、カガミは気に入ったらしかった。  カガミとの会話は、すぐに私の生活の一部になった。 切れ端4の秘密 ショック:なし  その日も、いつも通り楽しく会話をしていた。  私は多分、「消えてしまいたい」などと口走ったのだったと思う。  するとカガミが言った。  「じゃ、こっちに来ない?」  「私と楽しく暮らそうよ」  鏡の向こうには、いつも通りの微笑みがあった。  私もそちらに行けば、カガミのように笑えるだろうか。  そんな風に、思ってしまった。 切れ端5の秘密 ショック:なし  悍ましいものを見た、という感覚だけが残っていた。  気がつくと私の隣にはカガミがいた。  いや……「私が」カガミの隣にいた、のか。  「これでずっと一緒だね」  カガミは微笑んでいた。  鏡に私が映っている。あれは死体だ、と直感した。  そのときはじめて、カガミを怖いと思った。 切れ端6の秘密 ショック:なし  カガミは私を「殺した」ことに罪悪感などないようだ。  私が望んだことだ。望んでしまったことだ。  カガミの他に誰もいない、静まりかえった広い屋敷。  カガミは「仲間」を求めていたのではないだろうか。  私は孤独を感じてはいたが、真に孤独ではなかった。 切れ端7の秘密 ショック:なし  カガミが私を呼んでいる。  私はここにいるのに、カガミは私を探している。  ようやく私の姿を認めると「消えてしまったのかと思った」と言った。  以前にもあったのかと尋ねても、よく覚えていないという返答だった。  色々と試してみた結果、カガミは合わせ鏡の間にあるものが見えなくなるらしい。手など、一部が通っただけでも慌てて泣き出してしまうので、鏡には近づかないようにする。  いつも笑っているからか自分と同じ顔だからか、カガミの泣き顔は見たくないのだ。